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渡嘉敷島の想いでは・・・スイチュウのウラシマ効果
海の中は透明なグリーンとブルーのゼラがかかったサスペンションライトが真上から垂直に無数に落としているような感じ。
スモークを薄く焚いて、舞台やバックを白く塗る。でもペンキだと光ってしまうから、白い和紙をシワクチャにして背景に、舞台には細かい0.5mmぐらいの発泡ビーズを敷き詰める。
白いスモークにグリーンとブルーの光が筋を作ってぼんやりと空間が光っている。地面は白いビーズがやはりグリーンとブルーで濃淡を作る。ゆらゆらと全体がたゆたっているようなそんな舞台に、私は上からふわりと落ちてきた・・・そんなふうだった。
海の中は思っていたよりも非常に明るかった。目の前のサンゴの砂地ではイソギンチャクが触手を伸ばして食事中だし、小さくカラフルな魚が群れを作って右から左に、そして一匹の魚のように翻ってまた右にと泳いでいる。ここでイカやタコやマンタやウミガメ、イルカなど海のオールスターが出てくればこの舞台も派手で華々しいものになるのですが、残念ながらぎこちなく不恰好に泳ぐ真っ黒い人間一人ととそれよりスマートに泳いでいく二人の人間の他はあまり目立ったキャストが居ない。

海の中でも私は息を吸う。大きく吸うと体がすうっと浮き上がる。そうすると眼下に二人の姿が見える。二人は体をくねらせ器用に水底の世界を動いていく。私は吸い込んだ空気をぶわぁっと吐き出す。すると体が急に沈んでいく。二人の傍の砂地にそっと落ちる。そうなると泳ぐのではなくハイハイする様に前進していくことになる。

白いサンゴの砂地をゆっくり泳いで何分経っただろう?私は浦島太郎のようだ。目の前のイソギンチャクやウニやサンゴ、群れを作る小さな魚たちやもう少し大きな魚やそれらが泳いでいる不思議な透き通った水を見ていると時間が無くなっている。少なくとも後何分とか今何時ということを、全く考えない。そしてふと考える。いつからここに居るんだっけ?でも、夢中になっていろいろ見ているので1時間も2時間も居るような気になるし、逆についさっき1、2分前に来たような気にもなる。

ふと社長のほうを見ると水面のほうを向いてレギュレーターを口からはずしている。
『ポッ』
水中でそんな音が聞こえたような気がした。口からは銀色の輪が水面に向かって徐々に広がっていって・・・ねじれて消えた。もう一回
『ポッ』
今度も同じような軌跡を描いて消えていく。社長はうまく行かないなぁという感じにちょっと首を傾げてレギュレーターをもう一度咥え直す。
少し経ってからもう一回同じようにレギュレーターを口からはずして
『ポッ』
今度はきれいな銀の輪が水面近くまで形を崩さずに昇っていって、そして小さな小さな泡になって消えていった。

底の方にサンゴが一株、丸く生えている。そこに何かそぐわないピンク色のものが絡まっている。近づくと何か帯の様な物が絡んでいる。どうやったらそんなに複雑に絡むんだと思うぐらい念入りに絡んでいたが、社長とうちの奥様がそれを丹念にはずそうとしている。私もやってみようと思ったが、水中は変な抵抗があってうまく手足を使うことが出来ない。走行しているうちに社長はきれいに取り外して、ぐるぐるっと丸めると自分のベストのポケットにぎゅうぎゅうと押し込んだ。それが全然水中とは思えない自然な動きだったので、ちょっと見とれてしまった。

そうこうしている内にいつの間にか舞台は狭くなり、ついには水の上に頭が出てしまった。ああ、照明が黄色い。
「今ので大体30分潜っていたよ。」
これで30分か。


水中の写真は全然ありませんが、私たちが泊まった宿「ハーフタイム」のwebページのギャラリーブログを見ていただければそのうっとりする光景を少しお分かりいただけると思います。
by zukunashi | 2007-11-07 16:49 |


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