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ずっとあなたが・・・
「執事さん、山田さん」
広いがらんとした部屋に少し甲高い声が響くと、厨房の方から初老の品のいい男性が姿を見せた。
「どうされましたでしょうか、奥様」
奥様と呼ばれた女性は、奥様というよりお手伝いさんのようなグレーのジャージにTシャツで黄色いスリッパを突っかけてパタパタと走ってくる。その右手には携帯電話が握り締められていた。
「どうもこうも無いのよ。翔太ちゃんがお家に友達を呼んでくるんですって。どうしましょう」
「ホームパーティーでございますね。かしこまりました。いつごろ何人ほど来られますでしょうか?」
直ぐに携帯電話に耳をつけ、矢継ぎ早に話を始めた。
「翔太ちゃん、お友達は何人・・・・・・・10人も、入れる・・・分ったわ。であとどれぐらいで・・・そう、じかん・・・山田さんが何とかしてくれるけど・・・1時間ぐらい?えっなに?」
受話器を左手で押さえると
「10人ぐらいで、1時間ほどですって。大丈夫かしら。」
「かしこまりました、よろしいですよ。直ぐにプレイルームをお片づけしておきます。あと、食事は軽い物で構いませんか」
「食事はどうするの?・・・・・・うん、うん、そう、分ったわ。そう伝えるわね。じゃあ出来るだけゆっくり帰ってきて頂戴、はい、それじゃあね」
通話は終わったようで、彼女は携帯電話を畳んでジャージのポケットに入れた。
「いいそうよ。帰る途中で何か食べてくるのでしょ。マクドナルドとかケンタッキーとか」
「かしこまりました。でも坊ちゃまはこの間の健康診断でも少々気になる数値がございましたので、うちでお食事いただくのは非常に喜ばしいことと存じます」
「そうね、そのほうがいいわよね。じゃあ準備宜しくお願いね」
「かしこまりました」
そそくさと部屋を出て行く女性に、執事の山田氏は軽く会釈をして厨房に下がっていった。
厨房では白い衛生的なコックコートがあちらこちらとせわしなく働いている。
「グラン・ボネ」
「何でしょう」
厳しい顔をした赤ら顔のシェフが振り向いた。彼の帽子は一番背が高い。一番えらいのだろう。
「来客10名です。1時間後に軽食をお持ちするのでご用意をお願いします」
「んー。承知しました。ワインもお持ちするのでしょう」
「そうなると思います。お体のこともあるので宜しくお願いしますね」
「かしこまりました」
グラン・ボネと呼ばれたシェフは直ぐ部下の仕事のほうに向き直って、あれこれ指示を出した。
執事の山田氏はといえば、そのまま厨房そばの女中部屋に行き、こんどは女中頭に声を掛けた。
「1時間ほどでお坊ちゃまが帰宅されますが、お友達もご一緒なのでプレイルームにホームパーティの用意をお願いします」
「ようございます。30分でご用意いたします。 愛子、亮子、桂子、和美、裕子、真弓。パーティの支度に行くわよ。用意して5分でプレイルーム来てね」
奥にいた6人の女中がすっと立ち上がり、引き戸や棚からテーブルクロスや籠、布巾などを取り出して各々部屋を小走りに出て行く。
「それではまた後で」
「お願いします」
軽く会釈して女中頭も部屋を出て行った。

山田氏はその後で地下のワイン倉に降りて行き、ちょうど飲み頃のワインと食前酒を選び、花を花瓶に生けてプレイルームに持ち、お客様の為に玄関に打ち水をしてを掃いておく。こうして準備万端整ったころ玄関の呼び鈴が押される。
頭が少しはげ始めた40がらみの男性が後ろに大勢従えて、玄関を開けてもらうのをまっている。
そこに真っ先に来たのは、お手伝いさんのようなジャージを着ていた奥様なのですが、今は紫の地にオレンジや黄色のけばけばしい花をあしらったブラウスと、同じく紫の薄地のスカートをはき、胸には大粒の真珠の首飾り。首飾りとお揃いのイヤリングに指輪という装いで玄関に下りて嬉々として戸を開ける。
「お帰り翔太ちゃん、皆さん。どうぞ狭い処ですがお上がりになって」
「ママァただいま」そう言うと奥様の頬っぺたにキスをして家に入ってきた。玄関では執事の山田氏が頭を下げて待っている。
「ご用意は出来ておりますので、2階のプレイルームへどうぞ」
「用意は出来ているって、みんなおいでよ」
「お邪魔します」
「お邪魔します」
・・・・

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2045年・・・人口推計により、予想以上に少子高齢化が促進され2050年には総人口が1億人を割り込むと予想。政府は就労者人口を少しでも増やす為に『青年特殊介護制度』を創設。20歳になったら青年介護保険を払うようになる。それによりマザコン、ニート、引きこもり、オタクなどを『青年特殊介護施設』に収容し、彼らの生活を壊さず生産活動に従事させることを目指すもの。
翔太君(43歳)が住むココも梅並区にある『母子依存性青年特殊介護施設』
別名『冬彦の館』
ご近所様の目を気にせず、また無理な結婚のせいで不幸な女性を生まないよう、英国式完全介護を行っています。

翔太君のお母さん(74)の話
「ココに来てからお隣さんの噂話とか気にすることは無いし、私も家事から開放されて楽になったし。もし私が死んでも、大切な翔太ちゃんが変な嫁の物になる心配が無いし。本当に助かってますわ、オホホホホホフォ・・・」


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久し振りだと、鈍ってしまってダメですね。決め切れません。
by zukunashi | 2006-07-03 20:50 | トラバボケ関係


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