高学歴だからといって正しい科学知識を持っているとは限らない
※注この記事を書いた直後に東洋経済オンラインはコラムを削除してしまいました。それに関する編集長の言い分はリンク先に書いてあるとおりです。 
アホかと思いましたが、しかたがないのでこのまま掲載しておきます。

東洋経済オンラインのコラムに『インテリジェンスのプロ、原田武夫氏が開く近未来の扉』というのがある。元は外交官だった原田氏がインテリジェンス=諜報活動などについて書いているようです。インテリジェンスというと、頭のいい人を思い出したり、ウェブのことかな?なんて考えたりしますが、元々諜報という意味がある言葉なんですね。初めて知りました。

さて、そのインテリジェンスのプロの方の1月7日のコラムは奮っている。
安倍首相、A社の新技術で「水地獄」から抜け出せ!福島原発から、トリチウム汚染水が消える日』トリチウムを除去する技術についての話です。題名を見ておや?と思い、中を読んだらハテナがどんどん増えていった。これは・・・俗にいう詐欺に引っかかったか、ニセ科学に騙されているか?という話なのだ。
いや、それは仕方がない。科学というものは多分インテリジェンスのプロから見れば、ある種のテクニック、技術の問題であると理解されているのだろう。事実や真理などの問題ではなく、時間が立てば解決の方策は出てくるのだと、純粋に思い込んでいるのだろう。日本の科学力(?)を以てすれば、程なくして解決方法は出てくると。

私もプロの科学者(?)ではない。アマチュアの科学愛好者程度で、新しい発見云々とは縁遠い。
だからというわけではないが、こういう記事を読むと情けなくなる。いや、情けないより何故?という方が強いのも確かだ。何故原田氏はこのコラムでA社という会社の技術に疑問がないのか?
私事で恐縮ですが、パソコンの設定をしたり不具合を直したりする仕事をしている手前、Windows8の使い方とかを一通り話して聞かせる場合が結構あります。その時に「質問はございますか?」と聞くとだいたい「何が分からないのかすら分からない(笑)」とよく言われます。原田氏も多分この状態なのでしょう。

 それ以上に現場で驚いたのが、この技術からこの世に生み出される物質の数々である。“我が子”である試験炉を愛おしそうに見つめる社長の方を向いて、右腕である副社長が「それでは入れますよ」と一声かけながらバルブを少しずつ開いていく。しばらくすると温めた炉を抜けて出て来る物質の性質を、傍らに設置された質量計で見ることができる。

「あ、これ見てください、原田さん。普通に考えると、地球上では存在し得ない物質が出て来ていますよ」

地球上では変わらないはずの元素が、明らかにそこでは「変性」していたのである。そして理論的には宇宙空間のどこかでしか存在し得ない物質が、私たちの目の前に出現していた。私は思わず「元素転換ですね、これは!」と叫んでしまった。
安倍首相、A社の新技術で「水地獄」から抜け出せ!福島原発から、トリチウム汚染水が消える日より引用
よくわからない文章であるが、より支離滅裂にしているのは「地球上では存在し得ない物質」=「理論的には宇宙空間のどこかでしか存在し得ない物質」というこの言葉。まあ特許だ何だと面倒なことがあるのでしょう。何がどうなのかちゃんと物質名を出して書いて欲しいがそうもいかないのでしょう。地球上で存在し得ない物質というものは沢山ありそうですが、宇宙空間のどこかでしか存在し得ない物質というものは、条件が揃えば地球上にもありそうな気がする。地球だって宇宙空間のどこかですからね。何故回りくどい書き方をするかといえば、これもちゃんと理由を書きはしないのですが下記の通りのようです。
 さて、そこでまず気になるのはこの技術の中身である。生まれたての技術、しかも我が国と世界の命運を握っている技術であるので十分に秘密を守りながら、あえてざっくりとその概要を書くとこうなる
安倍首相、A社の新技術で「水地獄」から抜け出せ!福島原発から、トリチウム汚染水が消える日より引用
秘密は守らなければいけないようだ。やっぱり金か?と思うと然にあらず。
「原田さん、私たちはね、金儲けがしたいわけじゃないんだよ。ただ、こんなすごい技術が他でもない我が国で生まれたっていうことを皆に知ってもらいたいだけなんだよ。・・・略・・・何とかしたい、本当に何とかしたいんだ」
安倍首相、A社の新技術で「水地獄」から抜け出せ!福島原発から、トリチウム汚染水が消える日より引用
なんと見上げた心意気じゃないですか。一方対するは有名な教授や先生は下記の通り冷たい話です。
ありとあらゆる公的研究機関や有名大学の研究室でこの技術の有意さについて声を枯らしながら訴えても、権力とアカデミズムの住人たちは、これを一切無視してきたのだという。
安倍首相、A社の新技術で「水地獄」から抜け出せ!福島原発から、トリチウム汚染水が消える日より引用


さて、引用を交え長々と書いてまいりました。このA社のひとは酒を飲むと本音が出て世の為人の為自分達の技術を使いたいと曰い、素面になると技術を外に公表することを躊躇う。アンビバレンツな行動様式をお持ちだ。
またこのコラムを書いている原田氏は上記に引用したように「権力とアカデミズムの住人」を信用していない。このコラムの別のところではこんな事も書いている。
 我が国が本当に“成長戦略”を求めるのであれば、この技術を用いるしかない。その結果、砂上の楼閣のような仮説で象牙の塔を塗り固めてきたアカデミズムの住人たちが、何人も「討死」するのは間違いない。
今の科学は砂上の楼閣のような仮説で象牙の塔を塗り固めてきた、と認識しているようである。月面着陸はなかったと言い切る副島隆彦氏同様、何故かアカデミズムを敵視する人は、高学歴の人でも一定数いるようではある。討ち死にとか煽る書き方が上手いなぁとは思いますが、原田氏の考えには全く賛成することが出来ないです。

水からの伝言もそうでしたし、副島隆彦氏の月面着陸がなかった云々もそうですが、その方がロマンがあることは否定しません。でも事実を変えるには積み重ねが必要です。それをしない理由をアカデミズムの問題にすり替えるのは詐欺の手法です。

じゃあこの場合A社は何をすればよかったか。それは非常に簡単です。定量的に厳密な実験をして、レポートを上げる。それを論文にする。査読で問題点を指摘されたらそれを補う実験レポートを上げる。10年間声をからして訴える時間があるなら、数字を上げて実験論文を上げるべきだった。誰かにやってもらおうではなく自分でやればいい。科学の歴史で黙殺されたりした話は沢山ありますが、日の目を見る話も沢山あります。原田氏のような『権力とアカデミズムの住人』を十把一絡げで信用しない人をブレーンに据えてしまったことは不幸だと言えますが、無駄になった10年の代わりにこれから10年地道に数字を積み重ねていけば、常識を打ち破るイノベーションを得る事が出来るやもしれません。しかしそれ打ち破るのは常識で科学的事実ではない事をお忘れなく。科学的事実は打ち破るのではなく積み重ねるものですからね。

カッコよくイノベーションなんて言葉を使う原田氏は、科学の地味でコツコツとした佇まいを古いとかダメなもののように思ってらっしゃるのでしょうね。しかし、貴方が使っているパソコンひとつとってみても砂上の楼閣のような仮説が無いと動かないんですよ。目につく派手なものばかり追い求めないで地味でコツコツとした研究をちゃんとA社の方に伝えて失われた10年を取り戻すようにしていただければなぁと思います。
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by zukunashi | 2014-01-10 19:02 | ニセ科学…科学を詐称するモノ | Comments(5)
Commented at 2014-01-17 17:30 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mahlergstav at 2014-01-21 10:09 x
100%同意
Commented by zukunashi at 2014-02-14 22:21
鍵さま 書き込み有り難うございました。ずいぶん気が付きませんでした。
Commented by zukunashi at 2014-02-14 22:22
mahlergstav様 書き込み有り難うございました。
Commented by mahlergstav at 2014-02-18 13:09 x
本当に酷い話ですね。この手のインチキは、特許があるかどうか調べればすぐわかることです。関係者の氏名を発明者で検索したり、会社名を出願人で検索する。

登録特許どころか出願もしていないはず。その言い訳として、特許でも権利を守れないとか、皆に公開し、広く使ってもらいたい、ということが想定できます。

特許でも権利が守れないものを、ジャーナリストにほいほい見せるのはどうかしている。特許権を得ても、独占権を行使しなければよい。

そんなに画期的なものを特許出願しないのは、かえって無責任です。まとまなものかいんちきかは、特許明細書を見るとわかることです。自分で判断できなければ、特許事務所等に相談すればよいだけです。

特許明細書を見られては困るので、特許出願するはずがない。



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