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PARTNER『名香智子』
久し振りに近くの古本屋でマンガを見つけて買いました。わざわざ病気の日に買ったんですが、それが何故か『名香智子』【PARTNER】なんです。

名香智子を知ったのはこのマンガからです。
大体少女漫画は姉経由で知ることが多く、これもご多分に漏れず姉のおこぼれ?お下がり?形見??なんかわからんくなってしまっていますが、姉も友達から借りてきたのだと思います。ただ萩尾望都なんかもそうだったし、【日出処の天子】もそうだったのですが、結局姉と同じぐらい私もハマって読んでいるので、しかも私は読むのが遅くそれに加えて何回も何回も飽きずに読むので、姉は友人に帰せずに困ったのではなかったかなぁと思うのは無責任な今だからです。
 さてこのマンガ、連載は1980年のプチコミックスに連載されています。全17巻多分全部一度は読んでいます。華やかな話なんですが、私が好きになったのには今考えればちゃんとした理由があります。(その当時は気が付いていなかったので、読むのがずいぶん恥ずかしかった)

まず、設定がリアルである事。
社交ダンスの世界を知っているかというと、その当時の私は絶対知りません。なんせ連載開始時に私は小学生ですから。連載していたプチコミックを読んだわけではないんで実際はそれより大きくなっていましたが、ダンスに興味を持つようになるのはもっと後の事です。それに社交ダンスはいまだに私には難しい分野です。(間違えないように”やる”方ではなく”見るだけ”ですから悪しからず)そんな状態で何がリアルかというと、18歳にならないと社交ダンスをしてはいけないという、法律があるという事実を使っているところです。少年漫画は意外と簡単にそういったところを無視する事がまだまだ多かった時代です。だいたい巨人の星で、花形が中学生なのに外車乗り回しているようなのが受け入れられているのですから、20年経ってもそんなに革命的に変化していません。人間投げちゃってホームランボール取ったりしましたからね。それの延長線上に『キャプテン翼』とかがあるんであんまりそこいらは今でも好きじゃぁないです。
という訳で、長い割りには内容のない分が並んじゃいましたが、設定がRealだなぁとその頃感じたわけです。

そしてもう一つは人間関係です。通り一遍では捕らえきれない人間関係の描写が気にいったのでしょう。少女漫画の世界ではよく会った、恋愛の駆け引きっぽいところもありますが、どちらかというと別れの場面に心を奪われました。と言うのもこれも少年漫画との比較になっちゃいますが、少年漫画では主人公の少年に惚れた(惚れられた)少女は絶対離れません。結構今でもこの構図は生きていて、特に少年ジャンプではその関係は強固な場合が多いです。

私が今回買ったのは小学館文庫の『PARTNER』の2巻です。ここには人生で訪れる別離、転機が5種類描写されていると思う。それは各々恋人の心変わりでの別離だったり、許婚を解放してやるための方便だったり、肉親との死別、競技ダンスからの引退、そして初恋の相手の心の奥底の欲望を見ての忌避だったりと様々なのだが、どれをとっても辛いものや醜いもので、綺麗な別離は一つも無い。そんな生々しい別れが新鮮だったのは当然と言えば当然だ。思春期の頃だから、少しでも大人っぽいもの、背伸びできるものに目が行くのはこれも当たり前だ。少女漫画の中の世界が少年の私には大人に見えたのは間違いない。

それにplusして、台詞回しに惹かれるものがちりばめられている。
例えば・・・主人公の茉莉花の親友の小夜が自分の許婚との失恋に付いて語るシーン。
例えば・・・事故で腰を痛めプロダンサーとして引退した赤目が空港で自分の踊れない体を悔やむシーン。
例えば・・・外国での初の競技会で、無敵のチャンピオン(こういう人も出てくる)ホールデン卿とダンスについて話すシーン。

それぞれが何気なく鋭く何かの核心を突いてくる。ああこういうセリフは格好いいなぁこんな経験を積むにはどうすればいいのかなぁと憧れるセリフだ。

主人公たちの目が大きくて中に幾つも星がキラキラ輝いていても、少年漫画より惹かれるものをここでも見つけてしまって、大きくハンドルを少女漫画にきるきっかけになったマンガの一つに、久し振りに出会いやっぱりいい話でした。想い出は色あせてもまた読み返せばいいのだ。
by zukunashi | 2004-10-06 22:37 | マンガ(懐かしい)


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