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雁屋哲はオオカミ少年になった
意外と挑発するようなタイトルは好きなんです。

でも議論は下手なんでやるだけ無意味なんですが。

さて、タイトルだけ見ても何のコッチャ?となります。何のマンガの事かといえば、現在スピリッツで復活連載中の『美味しんぼ』(作:雁屋哲 画:花咲アキラ)の事だ。いま環境問題編が書かれており、2010年5月17日発売号がその最終話だった。そこで環境問題に付いて登場人物達が色々言っているのだが、その中で海原雄山はこんな事を言っている。
話の筋としては、ネオニコチノイドが危険と言う医師と科学者に話があり、受動喫煙は子供の脳に大きな影響を与えると言う話になり、科学者が『ニコチンとネオニコチノイドは化学式の上でも非常に似ている』というところを受けての発言です。

海原雄山「ニコチンとの類似性から、子供の脳に影響を与える可能性があるというのは、理にかなっている」

なるほどね。海原雄山を通して雁屋哲はそう言いたかった訳だ・・・と合点が行く。雁屋哲は環境問題において自分の考えを押し付けてしまった。彼の考えが正しいなら良いじゃないか!というのもたしかにある。けれど、一寸真面目に考えてみよう。

海原雄山は(美味しんぼという話の中では)何者か?陶芸家?美食家?精々そんなところだ。美の大家かもしれないが、環境や化学といった科学の大家ではない。あのセリフ
「ニコチンとの類似性から、子供の脳に影響を与える可能性があるというのは、理にかなっている」
を読めば分かる。ニコチンと、ネオニコチノイドの化学式が似ているという話は化学式を図形としてみた場合の話しだ。化学を知っている・・・特に有機化学・・・人にとって、化学式が似ているから性質が似るとは限らないし、同じ化学式でも異性体では性質が大きく異なるものもある。似ていれば同じ性質を持つという一般論が化学で通用するのかは大きく疑問なのだ。
そして、もう一つ問題なのは彼(=海原雄山=雁屋哲)が可能性があるという言い方をしている点である。可能性・・・言い切っているわけじゃない。でも否定はしていない。
 ◯ネオニコチノイドはニコチンのように子供の脳に悪影響がある!というのを100として
 ●ネオニコチノイドはニコチンと違うから子供の脳に悪影響がない!というのを0としよう。
彼の言い方だと99~1までという事になる。これならだれだって言える。そんな事を「理にかなっている」って・・・理(ことわり)ってこの場合なんだ?むしろ理がないんじゃないか?

実際ネオニコチノイドの昆虫に対する毒性については、しっかりとしたルポルタージュもありますが、疫学的、科学的な検証はまだ多くはないが、今までの農薬などと同じ様にまだ時間がかかるでしょう。もしかすると彼(=海原雄山=雁屋哲)の言うとおりネオニコチノイドに子供の脳に対する毒性が検証されるかもしれません。だとしても、彼(=海原雄山=雁屋哲)のマンガはこの問題にいちはやく警鐘を鳴らしたとは思いません。むしろ雁屋哲はオオカミ少年だと思っています。

雁屋哲は原作者として頑張ったかもしれませんが、あまり科学的、実証的ではなく、ニセ科学的な心情論としての環境問題の大家です。
by zukunashi | 2010-05-20 23:55 | マンガ(新しい)


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